創作置き場

個人的な創作物の置き場として不定期に更新していきます。

カガリヌイ

※BGMが流れます。ご注意ください。

こちらは海貝あかりの創作物置き場となっております。

今回はカガリヌイというオリジナル小説ですが、初めましての方は、恐れいりますがこちらを一読していただき、ご了承をいただいたうえで続きをご覧ください。

akariumikai.hatenadiary.jp

それでは、どうぞごゆるりとお楽しみください。

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「出会い(それ)」は突然訪れる。


 揺れる白いワンピースに、ロングストレートの黒い髪。

 

長袖を着るほど寒くはない気候……というより、暑さのほうが目立つというのに、その少女はたった一人、人気のない森の中で、座り込み、花を摘んでいた。

 

この森は深く、迷い込んだ少年は、少女に問いかけようとしたところで、近づかれた少女は逃げた。

 

少年と少女は恐らく同い年くらいの年齢だ。そこまで幼いわけではないが、若干の幼さが残る顔立ちをして、大人と変わらぬ体を持ち、健康そうなその肉体は、戦闘用に強化されたのか筋肉が盛り上がっている。

 

少年は暑がりなのかもしれない。茶色のような赤い短髪で、服は上半身の見えているベストのようなものを羽織っていた。

 

 逃げるものを追いたくなるのは性としか言いようが無いのだが、途中で少女は少年に向って振り返り、積んだ花をふわりと撒き散らしながら「こっちに来てはダメっ!」と叫んだ。

 

 強化されている少年の駆け足が止まるよりも早く、少女のほぼ真後ろから大きな獣が現れた。

 

それは、「モンスター」と呼ばれる類の異形のものだった。

 

 

 

少年は必死に手を伸ばした。

 

どんなに頑張っても少女とは距離がある、間に合わない、そう思わせるのに十分な時間や間がそこには存在していた。

 

だというのに、その少女は伸ばした少年の手を掴もうともせずに獣の方へ向き直ると、獣を少女の細い腕からは考えられぬ力で投げ飛ばした。

 

唖然とする少年の前に、少女はトドメをきちんと最小限に刺してから、「ふいっ」とため息をつく。

 

それから少年に向き直り、今にも居なくなりそうな寂しげな笑顔で「こっちへ来ては危ない、よ?」とだけ少年に告げて踵を返した。

 

少年はハッと顔を上げて少女の腕を掴んで彼女を引き止める。

 

間違いなく女性の、それも細めの腕だった。

 

斜めに傾いたその肢体には小振りながらもきちんと胸もある。どこからあの獣を投げ飛ばせるだけの力が出たというのか不思議でならないが少年はさして気に留める様子もなく「ここは、どこなんだ!?」と人懐っこさを若干覗かせる顔で少女へ問うた。

 

 少女は少し戸惑いながら、自分と何ら背丈も変わらない少年の顔を少し見上げた。

 

少年の背が低いわけではない。少女は自分の背が高めであることをよく理解していた。

 

それから「常闇の森……って呼ばれてる」とため口でいいのかと迷いながら、自分の腕を離そうとしない少年へ返した。

 

少年は若干首をかしげながら「常闇の、森ぃ?」と少女から目を離し、またすぐに「俺が行こうとしたところと違うっ!」と叫んだ。

 

ビクリと少女は体を震わせると、また戸惑いがちに「あの……迷った、の?」と高めの背に似合わぬ線の細い声で少年の顔を覗く。

 

少年はようやく少女の腕を離すと「うがー!!」と頭を抱えたまま「俺が行こうとしたのは暁の丘なんだよ!こっちの方だって聞いたから来たのに!」と叫んでいる。

 

その話を聞いた少女は目をこれでもかというほど真ん丸に開き、「暁の丘……!?」と言った。

 

少年は「知ってんのか?」と少女の顔を見ると、少女は「知ってるも何も……ここから徒歩で行こうとしたらどんなに早くたって3日はかかるわ?」と困惑した顔で少年を見た。少年は「それは関係ねぇんだけどよ、場所がわかればな。お前、わかるか?」と言って少女の肩をつかんだ。