カガリヌイ
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https://www.pakutaso.com/20150113022post-5086.html
少女はひるんで「え、ええ……」とだけ答えたが、その空はもう夕闇に染まっていた。
少年はその空を見上げて「もう時間的に無理だな」と言った。
それに対して少女は「そうね、もう……遅いかも……」と同じようにして空を眺めた。
少女の顔は先ほどまでの困惑した表情は見せていなかった。
ただただ、ひたすらに澄み切った顔でまっすぐ空を眺めていた。
少年はつかんでいた少女を離すと、頭を掻きながら「あー、いや、そうじゃねぇんだ……俺の目は、夜目が効かねえ……暗くなると、ほとんど使えなくなっちまう。この辺に、建物はねぇか?」と、ばつが悪そうに問うてくる。
少女は小首をかしげてから「そうね、このへんなら……あそこに仲介所(ギルド)なら……ちょうど獣を倒したところだし、これをお金にしてお夕飯にでもしましょうか?」というと、少年は「飯!!」とだけ食いついておとなしく少女の後ろを歩き始めた。
ちゃっかり獣の骸を担いでくれているのは、彼なりの優しさなのかもしれない。
暗くなるごとに、少年の足取りはあやしくなり、木もろくによけられない状態に見えた。
少女は「危ない……!」と言って少年の胸にそっと手を置いて木にぶつかる前に制止させなければ、間違いなく頭は大木に突っ込み、大きなたんこぶができていたことだろう。
それすらも少年はわかっていないようだった。
少女は不安になり、少し戸惑ってから少年の片手をそっと両手で包み込むと「私が、あなたの夜の目になる」と言って再び歩き始めた。
慎重に歩き、木は大きく迂回するようにして、通常1時間もかからない道のりはその倍以上の時間を要して仲介所へと到着した。
だが、そのころには日はもう暮れきっていて、どこの取引所も開いてはいなかった。
少女はがっくりと仲介所の前にある椅子に腰を下ろすと「ごめんなさい……間に合わなかったみたい」と告げて、少年にも座るように促した。
少年はただ、「まじか~……」とだけ言って少女のすぐ隣に腰かけた。あまりに自然にそばに座られたため、少女は驚きながら「ど……どうしてそんな近くに……!」と告げて少し距離をとろうとするが、少年はひどく目付きの悪くなった顔を少女へ向けた。
それから「お前の白い服しか目に光源として入ってこねぇんだ、案内してくれてるときも、面積の広い白い服で助かった」と言ってから顔をそらした。
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