カガリヌイ
ようこそおいでくださいました!
こちらは海貝あかりによる創作物(主に小説)置き場になります。
現在「カガリヌイ」というものを公開しており、一話はこちらになります。
初めましての方は、こちらをご覧いただき、ご了承いただいたうえで続きをお楽しみください。
前回の記事はこちらです↓
それから数時間、車内で「終点~クウェイル~」というアナウンスを聞いたハニルは、伸びをして起きると、まだ寝ているサダルフォンを呼び起こして電車を下りた。
ハニルは見たこともないようなそこそこに大きな駅だった。
彼女はその場で上を見上げて一回転すると「わぁ!都心って感じ!すごいわ、こんなところ来たの初めて……!」と言ってはしゃいだ。
サダルフォンは若干気恥ずかしげに「やめろよ、まだここじゃない。俺達が向かってるのはもっと都心部だぜ?今そんなにはしゃいで目的地についた時、ぶっ倒れないか?」と頭を掻いた。
ハニルは「ここよりも、もっと……?私、この力があったからあまり遠くへ、外へ行こうとしたことがないの、だから今、とっても楽しいわ。サダルフォン、ありがとう」と言ってサダルフォンの手をとった。
サダルフォンはニッと笑うと「そっか、よかったな」と言ってからお腹が空いて力が出ないとでも言うように駅のベンチに座り込み、次の電車が来るまでにご飯を食べようとハニルに促した。
ハニルは、それに賛同し、サダルフォンの隣に座り、盛大にパンにかぶりついているサダルフォンのそばで小さくパンをちぎりながら食べ始めた。
サダルフォンとハニルの食べる量は、毎回4~5倍は差があったが、何度か共に食事したハニルは周りの通行人に奇異の目でサダルフォンが見られようとも、もうすっかり慣れた様子だった。
ただ、時折、彼女の顔には影がさしていた。