カガリヌイ
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「きゃあ!」という声を上げるハニルを見て、男達はハニルの怯えた顔を掴むと「上玉じゃねぇか、売り飛ばす前に食っちまうか?」と卑下た笑いを見せた。
サダルフォンは自分を周囲から襲ってくる男共をものともせず跳ね飛ばすと、勢い良く「ようやく見つけた俺の案内役を勝手に売り飛ばそうとすんじゃねぇ!!」と言ってハニルの正面の男を拳でふっ飛ばした。
大半の者が、一体何が起こったのか、跳ね飛ばされた側の者でさえも理解ができなかった。
静まり返り、呆然と立ち尽くすギャラリーの前で、ハニルは驚いて両手を口にあてながら「サダルフォン……羽が……!」とだけ、やっとのことのように口にした。
ハニルが驚いたのも無理はなかった。
サダルフォンのその背にはハニルと会った頃から今まで存在していなかったドラゴンのような羽が生えており、皮膚も岩肌を思わせる鱗状に固くなった何かで、別人かのような姿に成り果てていたのである。
周囲の人間を風圧で撒き散らし、拳一つで弾き飛ばした人間は気絶をするほどの威力に意識ある者達は一斉にその場から逃げ出した。
中にはわざわざ振り返ってサダルフォンに「化物!」という罵声を浴びせながら逃げる者もいた。
サダルフォンはフーと息を吐き出しながら「数でなんとかなるとか思ってんじゃねーぞ、おい、大丈夫か?」と言って、ハニルに近づいてきた。
ハニルはサダルフォンを見上げたまま固まっていると「おーい?」というサダルフォンの間抜けな声と共に羽も鱗も消えていった。
ハニルは我に返るとサダルフォンの背中に回り込み、その背を触り始めた。
だが、どれだけ探ってもさっきまであったあの巨大な翼の面影はない。
サダルフォンは、不思議がっているハニルを他所に「や、やめろ、くすぐってぇじゃねぇか!」と今にも笑い転げそうに逃げ回ろうとしていた。
ハニルは、やっとの思いで「サダルフォン、あなた、翼は……!?」と聞くと、サダルフォンの表情は一転し、面倒くさそうに耳をほじりながら「竜族の血を引いた人間なんて少ないかもしんねーけど、そんな珍しいもんでもねーだろ、そんな幽霊か、化物みたいに……」と言いかけたところでハニルもあたりも「竜族……」とざわついた。
ハニルは、これ以上開けないというほど目を見開き「だからあなたは、あんなにも強かったのね」と言った。
サダルフォンは、一瞬呆気にとられてから屈託のない笑顔で「おうよ!」と返事をした。
ハニルは微笑んで両手を合わせると「竜族なんてはじめて見たわ、珍しくないってことは見かけないだけで結構沢山いるの?」と言ってサダルフォンを見上げた。
この世界にはハニルやサダルフォンのように特殊な力がある、あるいは、あるかもしれないと判断される人口は少なく、大半はなんの力も持たない者達で成り立っていた。
そしてそういった一般人と呼ばれる彼らを守り、彼らはサダルフォン達のような特殊な人間を支えながらこの世界は巡っていたのである。
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