カガリヌイ
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ハニルは複数人の男に囲まれていた。
その誰もが「野外に女がいる」や「悪くねぇ」「いやむしろ……」などと口々にハニルの外見を眺めながら口にしている。
サダルフォンはチンピラを相手にするめんどくささを全面に顔に出しながらチンピラとハニルとの間に入った。
ハニルは怯えた顔でさっとサダルフォンの背中に隠れた。
チンピラはサダルフォンの瞳の奥に激しい怒りのような鋭い光を感じて「男連れかよ」と言いながらジリジリと去っていった。
サダルフォンは心底めんどくさそうにため息をつくと、ハニルは申し訳なさそうに「ごめんなさい……その、起こしてしまって、その上、助けてもらって……」と頭を垂れた。
サダルフォンは「お前一人でもあいつらごとき相手じゃねぇんじゃねぇの?」と何気なく発すると、ハニルは頭を横に降った。
「だめなの……その、私の力では……対人で使ったら殺してしまうかもしれないから……」最後の言葉にサダルフォンはじっとハニルを見つめると、ハニルは顔を上げて、最初であったばかりの時のような、悲しみや苦悩、いろんなものが入り交じったような笑顔をサダルフォンに向けた。
それは、あたかも”自分さえ消えてしまえれば”と思っているかのような諦めの笑顔だった。サダルフォンはハニルの額にチョップを入れると「い、痛い……」と言って額を抑え、涙目になったハニルを尻目に開かれはじめた仲介所へ向かった。
ハニルが「ま、待って……!」と後を追いかけるとニッと大口を開けて歯を見せて笑ったサダルフォンが「笑うときはこうやって笑うんだよ!」と言ってハニルの頭をくしゃくしゃっとなでた。
ハニルはすこし困惑した表情を見せてからすぐに「こ、こう?」と言って歯茎を見せて笑った。
サダルフォンは「はっ、ひっでぇ顔!!」と笑うと、ハニルは「な、なによ、もう!」と怒った素振りを見せてから笑った。
どこにもさっきの苦しさを感じさせない、屈託ない笑顔だった。その仲介所は、田舎の仲介所とは思えぬほど広々とした空間で、沢山の人々が賑わいを見せていた。
サダルフォンは、些か不思議そうに「こんな山奥の仲介所なんて聞いたことねぇけど、栄えてるなぁ。有名なのか?」とハニルに問いかけた。
ハニルは首を横に降ってから「一般の人もここへ集ってきているようなの……ここいらは集える場所も少ないし、開拓も進んでいないから、みんなここへ集ってきては情報だの物資の調達だの、娯楽だのをするみたい……私もそんなに詳しくは無いのだけど」と苦笑をしてみせた。
サダルフォンは感心したように頷いてから「どーりで今朝みたいな貧弱なんがいるわけだな!」と頷いているとハニルは慌てて手を降ってから人差し指を口に当てて「シー!」と言った。
サダルフォンが訝しげな表情を見せたところに案の定、早朝から娯楽を楽しんでいたらしい、チンピラよりも少しは強そうなヤクザのような人達がワラワラと現れ始めた。
ハニルは顔を青くしてサダルフォンの背後に寄ると、サダルフォンもそれがあたかも当然かのようにハニルを軽く片手を上げて守る素振りを見せた。
ヤクザは、そんな二人を見てニヤついた顔をしてから「おうおう、朝から羨ましいもん見せつけてくれんじゃねぇの、ただよぅ、いくら兄ちゃんの腕っ節が強いからって俺らが貧弱たぁどうゆうこった?」と突っかかってきた。
サダルフォンは、怪訝そうな顔を崩さないまま「いや、お前らも十分弱そうだけど、何も俺はお前らのことを言ったわけじゃ」と言いかけたところで、ハニルは頭に手を添えてため息をつき、ヤクザ紛いは「てめぇ……!女をひっ捕らえて男を袋叩きにしちまえ!」と言って大勢で襲い掛かってきた。
元々命令されずともハニル狙いの輩がいたらしく、あっけなくハニルはサダルフォンの背後から引き剥がされると二、三人ほどに囲まれてしまった。